建設業をめぐる制度 はじめに
1.はじめに
公契約条例制定に向けて
ILO第94号条約と建設労働問題
日本における労働環境は悪化の一途を辿っているのではないだろうか。 それは「規制緩和」という耳ざわりの良い言葉とともに加速度的に進んでいる。 確かに経済だけではなく、あらゆる部門でグローバル化への対応が要請されてはいる。
それでは「何でも」規制緩和なのかと言うと、そうではないのではないか。 事実、国民の強い要望によって作られた情報公開法も施行されることになったが(2001年4月施行)、 その内容が国民の要望に応えられえるようになるには、今後の国民の強い運動が必要かもしれない。
そうした情報公開などは多いに規制緩和されなければならないと思う。 そしてともすれば国民にとって必要な規制緩和は放置されながら、無闇な規制緩和の拡大というなかで 不必要な競争を激化させ、そのしわ寄せは中小零細業者や労働者を否応なく蝕んでくる。
規制緩和を急速に進めたニュージーランドでは、労働時間の最低基準である「8時間労働」について 経営者団体から撤廃の要望が出されたと言われているし、派遣労働や裁量労働制が横行していると聞く。
日本でも、それは対岸の火ではないと言わなければならない。
あるキャリアOLから「夜になって、私はまだ仕事をしたいのに労働基準法で女性への規制があるから残念ながら帰らなければならない」 というこの一撃は、男女雇用均等法へと発展し、労働者の募集の場合「女性に対して男性と均等の機会を与えなければならない」ことに なるとともに「深夜業」が堂々とおこなわれるようになってきた。
21世紀の労働者の就労構造に見合った法整備が必要であるからと言って、労働者派遣法や裁量労働制が導入されることが、 日本の労働環境にほんとうに必要なのだろうか。
労働者派遣法でもその基本的趣旨は「専門知識や特殊技能を持つ労働者を一企業のものにするのではなく、数企業へ働く道を開き 『産業や社会の発展に寄与』してもらうことが望ましいことである」ということで作られた法律である。
しかし、派遣法の基本を逸脱し平成12年の派遣部門のほぼ全面的な解除(建設・港湾・警備など除く)は、あらゆるところで 労働環境の悪化を招いている。
派遣労働者を使うことによって労働者の福祉の切り捨てや賃金カットが横行していることは勿論、派遣先企業での トラブルなど実際に働いている労働現場からの報告を聞けばすぐわかることである。
現在の厳しい経済情勢の中で派遣労働者は急増を示しており、既に100万人を越えたと報告されている(2001年5月現在)。
さらに裁量労働制の導入は、一見すると労働時間が自由であるかのように聞こえるがそれは残業代のカットや労働強化へと 進んでいるのである。
こうした社会全体の労働環境の悪化も然ることながら、日本の労働法制の枠外におかれている日雇い労働者や 建設職人・労働者の労働環境の悪化は一言では言い尽くしがたいものがある。 とりわけ最近は長期不況のなかでの建設労働者・職人の賃金の下落傾向は目に余るものがある。 それに歯止めをかけなければならないと思う昨今である。
さらには建設関連の零細業者の倒産や夜逃げ、また建設職人・労働者の自殺は日常的に起きており話題にすらなり にくくなっているのが現状である。 それらを何とかしなければならないと思いながら、歯痒い日々の中で活動をしている。
そこで世界先進58ケ国にある公契約法(公共工事における賃金等確保法)、いわゆるILO第94号条約に基づき 建設労働者の労働環境の整備が臨まれるし、これは建設労働者の問題だけとしてではなく、21世紀における建設産 業全体の発展と建設生産活動の健全性にとって必要なのである。
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首都圏建設産業ユニオン・賃金対策部・文責 高野
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